平成26年7月30日 事故当日
園からご両親への第一報は「トイレで吐いたので救急車を呼んで運んだ。」でした。
「それくらいでわざわざ病院に連れて行ってくれるなんて、むしろ親切だな」
という思いでご両親は病院へ向かわれました。ただ、あもう君のお父さんが病院内に入ってまず聞こえたのは先に入った奥さんの悲鳴のような泣き崩れる声だったそうです。そこには園長、保育士、職員の3名がいました。ご両親が、園長に何があったのか聞いても「適切な処置をしたから大丈夫、意識はあります。」という説明を繰り返すだけで、クラスを担当する保育士に説明を求めたところ、「気付いたらプールで浮いていたため引き上げて心臓マッサージをして、救急車を呼びました。」と回答がありました。
しばらくして、救急医から「非常に重篤な容態ですから覚悟してください。」という宣告をご両親は受けます。救急搬送から引き継いだ時点で意識が無い状態で検査や処置できる状況でもなく、今出来ること、命を繋ぎ止めることを第一にした処置を行うとのことでした。面会もできず、あもう君に会うことを許されたのは夕方以降の5分程度が限界であることを伝えられました。園からは「仰向けになって浮いていて、意識が無かったため心臓マッサージをした。」、「最後に確認した姿は、潜って遊んでいた。」 などの断片的な説明を病院内で聞いただけでした。
平成26年8月6日 事故後の園と市の対応
あもう君は7日後の8月6日に低酸素脳症で亡くなられました。ご家族が病院に詰めているその間、園は在園児の保護者に対して「あもう君は体調不良で意識不明になった」と文書及び口頭で説明を続けています。この誤った情報は未だに訂正されておらず、未だにあもう君が病気で亡くなったと信じている保護者もいるのが現実です。
7月30日以降、園関係者は病院へ御見舞いどころか、ご両親が姿を見かけることもありませんでした。自宅へ来ることも無く、連絡も無く、謝罪など1度も無く、事実の説明もありませんでした。何度か園から事務的にあもう君の生死の確認と状況確認だけ携帯にあったそうです。その際、「話しはそれだけですか?他に言うことは無いですか?」と聞いても謝罪は無く、事実の説明はありませんでした。
市町村は園と同様に、ご両親に対して事実の説明を行う法的な責任があります。しかしながら、市がご両親に連絡を行ったのは、事故から1ヶ月以上も経過してからでした。この件については、9月10日に状況を見かねた保護者有志が市長宛に質問書を提出して「市として調査を長期間にわたり怠っていた」として謝罪がありました。その後事故から2ヶ月近く経過した9月16日から10月17日に特別監査が実施されることとになります。
平成26年8月13日 保護者説明会
市と園が出席した保護者説明会が開催されました。ご両親は、他の保護者と同じく「平場の席」に着席し説明を受けることになります。その日まで、市及び園からご両親はなんら事故の説明を受けておられません。説明会では、「プール監視に関して、市の配置基準を満たしていた」と園及び市は説明し、両親に対する謝罪を拒否しています。
ただ、その後の市による特別監査による調査で、この説明は誤りであり、プール遊び中の30名もの園児を誰1人として適切に監視していない時間帯があったことが明らかになります。さらに、神奈川県大和市のプール死亡事故を受けて6月に国が市に通知した「プール監視に関するガイドライン」も、園長が「本園は安全対策が十分である」として職員に周知していなかったことも明らかになります。
特別監査まで
説明会後も、ご両親は園に対して事実説明を求め続け、ようやく9月6日に文書で回答するという約束を園長と取り付け、当日園に向いました。以下、ご両親が作成した経緯書から抜粋します。
「私達は、9月6日となり園との約束の日を迎え伺ったところ、玄関で5分待たされた挙句、I理事が現れ、
I理事:『園長は体調を崩し昨日から休んでいるため、居ませんのでお引き取りください。』
両親:『今日、園長とお会いする約束で、謝罪をしたうえで、経緯書や報告者なども渡すと言われているのですが・・・、』
I理事:『そんな話し聞いていないし分からないので、私に言われても困る。』
両親:『それなら自宅へ伺うか、電話で話しをさせて欲しい。』
I理事:『話すことも出来ないぐらい重篤な状況のため無理です。』
両親:『このような不誠実な対応が許されるのか、理事として園長に代わって誠意のある対応をして欲しい。』と伝えると、
I理事:『(笑いながら)私には関係ないし、報酬も貰ってないし、権限も無ければ発言権も無いので無理です。』
両親:『笑いながら言うことですか? 子供の命を何だと思っているのか? 約束を平気で反故にするのか? こんな不誠実な人とは会話にならないので、理事会の代表者か、調査委員会の委員長と話しをさせて欲しい。』と伝えるとI理事は誰かに確認しに行きました。
(中略)その後、副園長が現れたので、
両親:『非礼で不誠実ではないか?』と本人に伝えると、
副園長:『(笑いながら)私は9月1日付で副園長になったので、それ以前のことは知りまへん。』と回答されました。
暫くの間、時間が止まりました・・・。 『この人は何を言っているのだろう・・・?』 またしても、普通の感覚や価値観、思考回路では想像出来ない、理解出来ない言葉が発せられました・・・。」(以上、「経緯書」から抜粋)
そのやり取りのあと、園長は「病気」を理由に一切姿を現さなくなりました。そして、後任の責任者達は「全ては園長の責任」、「園が立ち上げる調査委員会の結果を待て」として、一切の説明責任を放棄することになります。
平成26年9月16日 京都市の特別監査
平成26年9月16日から10月17日にかけて、京都市の特別監査が園に対して実施されました。特別監査に関しては、①事案発生時の状況及び日常のプール活動の管理状況、②事案発生後の園の対応、③日常の園運営 の観点からの調査となりました。
特別監査で明らかになった点は次のとおりであり、保護者説明会の説明と異なり、プール監視体制の杜撰さが明らかになりました。
(1)事案発生時の監視体制の不十分さ
プール活動において各保育士の役割分担がなく,専らプールの監視を行う 者の位置付けが明確にされていなかった。 このため,プールにいた保育士も,記録の記入等のためプールから一時目 を離していたなど,児童に十分目が行き届いているとは言えない状況にあっ た。
(2)プール活動に対する事前の事故防止対策についての不徹底
平成26年6月に通知された「児童福祉施設等においてプール活動・水遊び を行う場合の事故の防止について」(厚生労働省通知)を職員に周知しておら ず,毎年救命講習は行われていたが,プール活動の開始に当たり,通知に記載 されていた「専ら監視を行う者を指定する」こと等の事前教育が行われていな かった。
(3)監査における虚偽の報告
書類検査により,当該事案に関して,当事者職員であるひまわり組担任 を作成者とする園内報告用の事故報告書が作成されていたが,実際にはひまわり組担任は作成しておらず,他の職員が作成していたことが判明した。 また,保護者から指摘のあった,昨年度のプール活動中に児童がけがを した事案など,過去の事案についても,発生当時に園内報告用の事故報告 書が作成されていたように書類が整えられていたが,実際には最近になっ て作成されていたことが判明した。
しかしながら、再発防止に不可欠である「原因究明」は当初から調査目的とされず、
当該児がプール内において仰向けで水に沈んでいた原因については,不明で ある。「溺れた」,「転倒」,「熱中症」等様々なことが原因として推測されるとし ても,本調査では原因を断定することはできなかったが,いずれにせよ,発見 されるまでの一定の間,呼吸停止状態があったことが認められる。またプール 活動における監視体制の役割分担が不明確であったため,その瞬間を見ていた 者はいなかった。
として、調査は終了しました。「原因究明」については保育園が独自に立ち上げた「調査委員会」に委ねるという事になり、園に対して「原因究明の調査」を含めた内容の「改善勧告」が市から出されました。
平成26年12月19日 園の調査委員会
特別監査の結果、園が主体的に「原因究明」を行うように「改善勧告」が出されました。しかしながら、改善報告書の提出期限の12月19日に園は「園が立ち上げた調査委員会が1度しか開催されず、原因究明が出来なかった」とする不十分な回答を市に提出します。この改善報告書を説明する市と園が出席した12月22日の保護者説明会では、その内容について問題視する意見が多数出されましたが、市は「園の対応に満足ができる」という発言があり、改善勧告に対する園の行政指導は完結とされました。
その後保護者からの指摘もあり、勧告期限の12月19日を2ヶ月近く経過した平成27年2月3日に「事故調査報告書」がようやく園から市に提出されました。しかし、事故発生の原因や救護措置の妥当性についての医学的・専門的な観点からの検証は行われておらず、さらには「プール監視体制が不十分であったため、死亡児童の異常が発見されるまでの経緯が不明である。したがって事故の原因の特定、死亡の結果に対する責任所在の確定は不可能であった」と調査を一方的に完結させる結論がなされているなど、きわめて不十分なものでした。
また調査委員のメンバーは、園関係者の知人などで占められていることがわかり、調査自体の公平性にも問題があることが判明しました。これに加えて、調査委員出席の上で調査報告書の内容を説明するとして、在園児の保護者及びご両親に案内があった平成27年2月5日の説明会には多くの保護者が集まりましたが、そこには調査委員は誰も来ておらず園長から「調査委員は全員欠席です」とだけ言及がありました。当日出席していた市の担当者に対して、「この対応をどのように考えるか」という質問が複数出されましたが、「市としては、園の対応を評価する。」と回答し、園及び市の調査は一方的に打ち切られることになりました。
現在まで
このような園及び市の死亡事故後の予想外の対応に、在園児の多数の保護者とご両親は、「園内だけでなく広く事故の情報を発信して関係各所への働きかけを行う」必要性を強く認識しました。私達は、保育施設における事故の再発防止のためには客観的、専門的な視点から事故を検証し原因を明確にしてその結果を広く開示する必要があると考えています。しかし、事故後の園の対応からも明らかですが、これを「当事者」である民間の園に担わせることは公平性を欠き不適切であったと思います。そこで、事故の原因究明と再発防止策の検討を京都市が主体的に行うことが再発防止のために必要不可欠な対応であると私達は考え、ご両親とともに「あもう君の家族と安全な保育を共に考える会」を立上げ、関係各所への働きかけと情報発信を行っています。